村下孝蔵さんの【白い花の咲く頃】が紡いだ夏の想い。歌詞の意味や世界観を解説
聴き込むほどにその世界観の味わいが分かってくる村下孝蔵さんの楽曲。
すでに50曲以上解説と鑑賞をおこなっている管理人も、楽曲と向き合うたびに新たな発見があり驚いています。
当記事では引き続き、限りなく美しくこの上なく悲しい12thシングルB面「白い花の咲く頃」を取り上げてまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。
(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの【白い花の咲く頃】が紡いだ夏の想い。歌詞の意味や世界観を解説(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
個人的な解釈にならざるを得ませんけれど、きっと、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になること請け合いです☆
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
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(この音源は声が非常によく出ていますね! 外部へ飛びません▶この場ですぐに聴けます)
プールサイドでは 揺れる夏と
光る水面に 時が止まる
解題
「珊瑚礁」などと同じく水底を感じさせるイントロが印象的です。そこから深く沈み込んだ冒頭のメロディは、本楽曲のテーマをよく表していますね。
海の中に差し込む日差しが空へ抜け、人間たちの在り方を照らし返すようです。
基本的な場面設定としては、ある男性がすでにお別れするに至ったお相手の女性のことを思い出し、語りかけているというものでしょう。
永遠の時に出会う
夏の日、男性は最愛の女性とともにお出かけをしました。暑さが続いていたので、どちらが言い出すでもなく泳ぎに行こうという話になったのです。
これまでにも一緒に外出したことはありましたが、男性は初めて女性の水着姿を目にして、美しさに見とれます。
他にも大勢の人が訪れてそれぞれ楽しむ「プールサイドでは」、太陽の熱ににじんで「揺れる夏と」周囲に植えられた木々の涼しさ、蝉の声までもが映り込んで「光る水面に」、二人の「時は止ま」りました。
瞼の裏には 跳ねる君が
どうして今でも 消えてくれぬ
男性の心は過去と現在を行き来します。
たった今この「瞼の裏には」あの瞬間に存在して輝いた「跳ねる君が」変わらずに浮かんでいる。
あれからいくつも夏を重ねたのに「どうして今でも」その影は「消えてくれぬ」のだろうか。
当然に答えは分かっているはずですが、男性の苦悩は尽きることがありません。再び想いは女性との夏の一日へ飛翔します。
追憶の浜辺
汗も拭かず 熱い日差し浴びて
向かい合った浜辺
二人言葉無くし じっと立ち尽くして
夕陽見つめていた
次に女性と出掛けたのは海でした。
お互いに楽しむことや愛し合うことに夢中で「汗も拭かず」、頭も首筋も背中まで焼く「熱い日差し浴びて」いつまでも「向かい合った浜辺」の情景が浮かびます。
その瞬間が永遠に続くことを疑っていないことを示すように「二人」はお互いにかける「言葉」も「無くし」、寄り添い合って「じっと立ち尽くして」遠く海原に揺れて沈む「夕陽」を「見つめていた」あの日。
まるで昨日のことのようで、今日、男性は自分のいる場所が分からなくなってしまいそうです。
本当にきれいで……切ない。
君をなくしたら 生きていけぬ
男らしくした 僕のあの日
貴方なくしたら 死んでしまう
そう言ってくれた 君のあの日
さらに、男性が自分の気持ちを打ち明けた日の記憶も舞い戻ってきます。
二人でデートや旅行やいろいろなことをする日々が続いた後、「君をなくしたら 生きていけぬ」と男性は告白しました。
これからもずっと一緒にいてほしい、という願いを込めて「男らしくした」姿を見せた「あの日」の光景が強く胸に刻み込まれ、現在の男性を押しつぶします。
女性はおそらく涙を浮かべ「貴方なくしたら 死んでしまう」と答えてくれたのでしょう。
「そう言ってくれた」女性の姿がとどまる「あの日」だけが永遠に男性とともにあるのです。
繰り返す夏の終わり
いつのまにか 笑い声にまみれ
白い花が咲く頃
日焼けしてた 肌がさめて
何もないように 夏が又終わるよ
二人の心が一つになってから、時の過ぎるのはあっという間でした。
幸せな時間だったはずだけれど、男性にとってはぽつぽつとした想い出しか残っていません。しかしそのことが本当に幸福だったことの証なのかもしれません。
あの日以来「いつのまにか」絶えることのない二人の「笑い声にまみれ」、季節の巡りに応じた「白い花が」人知れず「咲く頃」、唐突に関係は終わりを迎えました。
村下さんが目にしていた何らかの花だと考えられますが、個人的には小さい花びらがたくさんついているようなものを思い浮かべます。
しかし夏が終わるという時期から考えて、例えば白いコスモスなどが念頭に置かれているのでしょうか。
いつまでも残ると思っていた「日焼けしてた 肌が」じょじょに「さめて」しまえば、あの日々がまるで嘘であり「何もないように」二人を引き離して「夏が又終わるよ」。
最初に女性との日々が終わりを告げた時点を表すとともに、その日々を思い返すことで、男性が何度も何度も同じ夏の終わりを繰り返しているとみることもできますね。
イントロや間奏を含め、本楽曲が全体として幻想的な空気を持っていることとも関係してくる部分でしょう。
二人言葉無くし じっと立ち尽くして
夕陽見つめていた
男性の追憶はいつもこの情景が終着点です。
これからを疑うことなく、過去も忘れ、その瞬間に「二人」しか存在しない中で「言葉無くし」、動かぬ時間の圧倒的な様に「じっと立ち尽くして」いた浜辺。
沖に燃える「夕陽」を手を取り合って「見つめていた」あの日。
完全な愛の表現を垣間見た瞬間は、男性の胸の内にずっと残り続けることでしょう。
簡単な言葉を使えば「ひと夏の恋」とさえいえる出来事を、互いの真心を反映して美しく、したがって悲しく描いた名曲ですね。
聴きどころ
最初に触れたイントロのみずみずしさと輝きは、この時期の村下さんの楽曲によくみられるものです(アルバム『陽だまり』)。
本楽曲では間奏部分のトランペット(あるいはサックス?)が男性の想いを表現しているのか、激しくも狂おしい印象を与えて見事ですね。
村下さんの声もどこかかすれた感じがして味を出しています。
『清涼愛聴盤』バージョン
(こちらもすぐ再生できます▶)
セルフカバーアルバム『清涼愛聴盤』に、本楽曲の公式別バージョンが収録されています。
イントロがよりひそやかな雰囲気へと変化し、パーカッションも加えられるなど、全体としてやや明るい曲調にアレンジされていると感じますね。
これはアルバムの方向性に寄せたものなのでしょう。
管理人の感想(あとがき)
村下さんの楽曲の中でも隠れた名曲の部類に属する本楽曲ですが、管理人も当初は存在を知っている程度であまり聴き込んでいませんでした。
しかし「いつのまにか」他の有名楽曲や気に入った楽曲に「まみれ」てこの曲が耳に入り込んでくるようになったのです笑
世界観の深みがだんだん分かってきて、山のような形(?)をなす冒頭のメロディの悲しさに打たれたときには、もう本楽曲がリピートされていました。
わしもきっと白い髭を剃る頃まで聴いていることじゃろう……。
まとめ
今回は「白い花の咲く頃」を解説・鑑賞してまいりました。
ぜひ、皆様なりの味わい方などもコメントで教えていただけると嬉しいです~☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は阿久悠さん作詞「美し過ぎるミステイク」でした)
白い花の咲く頃【歌詞全文】
プールサイドでは 揺れる夏と 光る水面に 時が止まる 瞼の裏には 跳ねる君が どうして今でも 消えてくれぬ 汗も拭かず 熱い日差し浴びて 向かい合った浜辺 二人言葉無くし じっと立ち尽くして 夕陽見つめていた 君をなくしたら 生きていけぬ 男らしくした 僕のあの日 貴方なくしたら 死んでしまう そう言ってくれた 君のあの日 いつのまにか 笑い声にまみれ 白い花が咲く頃 日焼けしてた 肌がさめて 何もないように 夏が又終わるよ 二人言葉無くし じっと立ち尽くして 夕陽見つめていた
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:遠山裕ー1987年9月21日)
関連記事ーその他楽曲解説など
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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