【第五位】村下孝蔵さんの北国曲「稚内から」愛を誓った二人にふれる。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!
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今回取り上げる楽曲は、ファンの間ではかなり評価の高い「稚内から」です。
歌に実際の地名が含まれるのは、いかにも往年のフォークソングや歌謡曲の印象もありますが、そこは村下孝蔵さんですので従来の枠にとらわれない独特の世界観に仕上がっています。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。
(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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【第五位】村下孝蔵さんの北国曲「稚内から」愛を誓った二人にふれる。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
管理人なりに全力で解題に取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆
以前にも隠れた名曲ランキング内の記事で触れていますが、これらの記事は姉妹サイト(おうじゃの福眼)で公開していたものを手直しして移植したものです。
現在では歌詞のすべての言葉を、その語順のままに解題していく形をとっています。しかし、本楽曲はまだ最初の名残で抽出的に解題していること、ご容赦くださいませ。
下部に歌詞全文を用意しました! 適宜ご利用くださいね。
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第五位 “稚内から”
(遷移せずこの場で再生できます▶)
直線の灰色の道を 北へ走らせる
最果ての雪の空港は 凍り付く
解題
雪がちらつく、あるいは雪が降り積もった後の、冷えて鎮まった情景を連想させる導入から楽曲は始まります。
やさしくリズムを取る木琴が記憶を描写しているようでもあり、男性と女性が現実に「灰色の道」を移動している様子を想起させもします。
村下アニキの楽曲の基本路線かとも思えてきますが、結ばれない相手との小旅行が基本的な場面設定ですね。
タイトルに北海道の地名「稚内」が含まれていますし、北へ向けてまっすぐな道を車で走っていたのでしょう。
北海道の、特に道北へ向かう道は本当にまっすぐです。
窓から吹き込む風が滝のように鳴っているというのも、二人の関係性を暗示するものがあります。
冷たい風でしょうから、窓を大きくは開けられないわけですね。
揺れてた島影の名前教えたね
君を連れて歩いたあの春
北の国で明日を誓った 地の果てまで
位置的に、ここで見える島影は稚内の西にある利尻島や礼文島です。
車から眺めつつ名前を教えたのか、息をつくために停車して歩きながら女性に教えたのか、どちらも考えられる表現です。
その後、二人は「地の果てまで」ともに行こうと誓いました。
「稚内から」というタイトルには、最果ての地から二人が新たに関係を始めるという意味も込められているでしょうか。
春の稚内地方ならば、まだまだ雪や氷に閉ざされている場所がほとんどです。
草原の緑や青が際立つことはなく、村下アニキも描写するように灰色の風景の中での出来事ということですね。
いたずらに年を重ねたよ 一人きりになり
行き着く場所が何処かにある そんな夢
しかし、男性と女性はお別れしてしまったことが分かります。
男性はその後もおそらく女性のことを想いながら年を重ね、どこかにたどり着く場所があるはずという気持ちも抱えながら、それが叶わない夢にすぎないことも理解しています。
この「行き着く場所」の意味合いですが、女性に対する自分の気持ちの決着ととらえてもよいですし、もっと広く、男性や女性のそれぞれの人生が向かって行く先のような意味にとらえることもできそうです。
淀んだ空にも日差し探した
真綿色の雲が浮かんでた
晴れた日ではなく、まだ寒さも厳しい稚内地方の春の景色の描写として、「淀んだ空」というのはぴったりの表現にも思えます。
比喩としてみれば、男性の日常(人生)が女性を失って淀んだものになってしまったけれども、その中でも光を探して生きたことを表していると読めます。
「真綿色」は、はっきりスッキリとした白色ではなくて、やや黄色みがかった白色を指すようです。
ここにも村下さんの言葉選びのセンスがうかがわれます。
納沙布岬からサロベツ原野へ
二人輝いてたあの春
片手引いた丘に佇む
この部分は地理的に少々検討が必要です。
「納沙布岬」は北海道の東端の根室地方(道東)に存在する岬である一方、「サロベツ原野」はここまで男性と女性がともに旅をした道北地方にあるのです。
納沙布岬からサロベツ原野までは500キロほどの距離があり、車でも15時間以上かかりますので、一気に駆け抜けたとみるのは本楽曲の風情と合いません。
凍り付く最果ての空港へ向けて、数百キロの距離を、わざわざ北海道の東の端から走っていくというのもなんだか奇妙です。
ところで「ノシャップ岬」という場所が稚内市に存在します(笑)
こちらは沈んでいく夕日が美しい場所で、さらに稚内市内には徒歩で登って散歩ができる山とも丘とも呼べそうな高台があります。
よって、重大な指摘(?)ですけれど、村下さんはこの歌詞の部分において地名ミスをした……のではないかな~と管理人は考えています。
男性と女性は「ノシャップ岬」を訪れ、海を遠く見渡せる丘に手を取り合って登ったのでしょう。
男性は、今度はひとりだけでその丘に立って思い出をたぐっているということになります。
ここまで見てきたように、本楽曲は実際の地名も歌われて、リアルな情景を思い浮かべられる構成になっています。
しかし、それと反比例するように、男性と女性がどのような背景を持ち、どんな関わり方をして、最終的にどうなったかという点はこちらの読み取りに委ねられていると感じます。
二人がともに過ごしたこと。結ばれることがなかったこと。
それらの事実が、男性と女性いずれにとってもひとつの大切な局面だったということが示されているといえるでしょうか。
ここで「この曲は何言ってるか分からないや~」とならずにどこか感じさせられる部分があるのも、やはり村下さんお得意の事実に語らせるワザでしょう。
聴きどころ
曲を最後まで聴いて知っているから言えるのかもしれませんが、導入部分の音色による楽曲全体の風景描写が見事です。
イントロだけでもう風景が浮かんでくるのです(笑)
ひとつひとつ場面を切り取っているようでありながら、最初から最後まで流れがつながっていることも上手に表現されていると思います。
サビの盛り上がりは口ずさむのにちょうど心地いいですし、男性や女性の動作の部分がそこで歌われているのも、聴き手に印象を持たせる効果十分です。
何よりも村下アニキの歌い上げが美しいのですけれど。
管理人の感想(あとがき)
管理人はライブバージョンで初めて本楽曲を聴きました。
実に悲しさを際立たせたアレンジがなされていたのを覚えています。
たぶん『しのびあるきのたそがれに』というベストアルバムだったと思いますが、はっきりと思い出せません。
メドレーに含まれていたバージョンなので、違うような気もするのですが……。
改めて確認しておきます!
ともかく、その物悲しさにやられました。
個人的には、村下さんの楽曲って「切ない」という感情ではないように思うのですよね。
「切ない」というとそれを感じる個人に結びつきが強いですけど、物悲しいとか、まさに哀愁があるとか、一歩引きながらも直接にその事実や感情を味わっているような……。
この「稚内から」はそういう感覚が見事に表されていると思います。
(付記)隠れた曲ランク
メドレーにも含まれて、ライブで演奏されることもあるので聞いたことのある方も多いかもしれません。
しかし、それもやっぱり村下さんファンになってから、という印象です。
実際の地名が入る曲にはやや抵抗がある人もいそうですし、本楽曲はどちらかと言えば通好みという感じでしょうか(笑)
隠れた曲ランク=4
まとめ
今回は村下孝蔵さんの北国曲「稚内から」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「珊瑚礁」でした)
稚内から【歌詞全文】
直線の灰色の道を 北へ走らせる 最果ての雪の空港は 凍り付く 窓の隙間から 風が吹き込み 滝のように音が 鳴り続く 揺れてた島影の名前教えたね 君を連れて歩いたあの春 北の国で明日を誓った 地の果てまで いたずらに年を重ねたよ 一人きりになり 行き着く場所が何処かにある そんな夢 淀んだ空にも日差し探した 真綿色の雲が浮かんでた 納沙布岬からサロベツ原野へ 二人輝いてたあの春 片手引いた丘に佇む 揺れてた島影の名前教えたね 君を連れて歩いたあの春 北の国で明日を誓った 地の果てまで 直線の灰色の道を 北へ走らせる 最果ての雪の空港は 凍り付く
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1991年4月25日)
関連記事ーその他楽曲解説など
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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