村下孝蔵さんの【とまりぎ】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞
村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!
当記事では、前回取り上げた「浜辺にて」(『何処へ』所収)をはさみまして、10thシングルA面「ねがい」に引き続き、同シングルB面「とまりぎ」を解説・鑑賞してまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの【とまりぎ】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。
それでは、早速「とまりぎ」の解説に入っていきましょう!
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
- 🎵 当記事の著者について
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たとえばあなた最後に
帰る場所があり
さまよい疲れていたなら
知らぬふりしてた
解題
人のいない幻想的な森の中、ぼんやりと輝くひとつの木が見えてくるようなイントロです。
このやわらかな調子が全編にわたって継続し、曲の主題を上手に表現していますね。
基本的な場面設定としては、ある男性に想いを寄せた女性が、おそらく現在は離れ離れになってしまったその男性に対して語りかけているというものでしょう。
女性の心は二人の出会いまでさかのぼります。
外界と関わりなくひっそりと暮らしていた女性もとへ、あるとき男性が現れました。
「たとえば」男性が自分のところでなく「最後に帰る場所があり」、ただ一時的にこの世のあり方に「さまよい疲れていた」だけだった「なら」、自分は「知らぬふりしてた」だろうと女性は懐かしく振り返ります。
そもそも、女性はあまり人と関わるタイプではなかったのかもしれません。
自分一人でも自然に、何事もなく生活することができていて、それで十分に満足もしていたはずでした、……
だけどもあなた最後に
帰る場所もなく
倒れそうな人だから
心の窓を開けた
「だけども」心も身体もぼろぼろの男性は「最後に」迎えてくれる誰かがいるだろう「帰る場所もなく」放っておけば「倒れそうな人だ」ったから、女性はそれまで閉じていた「心の窓を開けた」のでした。
最初から心を開いていたのではないという点からして、女性はかつて何らかのつらい体験をしたのかもしれませんね。
*風吹けばあなたを 雨降ればあなたを
いつの日もあなたを 想っている
昨日も 今日も そして明日も
けれど、一度心を開けば、女性の男性に対する愛情はとても深いものでした。
「*風吹けば」男性が寒くないだろうかと「雨降れば」男性が濡れはしないだろうかと、一緒に過ごしていないときでも「いつの日も」男性を「想っている」のです。
この段階で女性と男性が知り合ってからどのくらいの期間が経っているのかは分かりませんが、いつの間にか女性は「昨日も 今日も」男性を想い続け「そして」まだ来ない「明日も」その想いは変わらないだろうと感じるほどになっていました。
パジャマ姿ねむそうに
新聞を読んで
紅茶二杯ゆっくりと
飲みほした後
そんな女性が男性とともに暮らすようになるまでに時間はかかりませんでした。
女性は早起きをして、お湯を沸かし、二人で食べるための朝食を用意し、男性のことを待っています。
その香りにようやく起き出した男性は「パジャマ姿」のままで「眠そうに 新聞を読んで」、朝食をつまみながら「紅茶二杯」を自分のペースで「ゆっくりと飲みほした後」で、洗面所へ向かいます。
二人で済ませた食器や紅茶のカップを片付ける女性は、その姿を微笑みがちで眺めています。
ひげを剃り それから言う
今日は寒いねと
テレビからは平和そうな
声が聞こえてくる
男性はのんびりと「ひげを剃り それから言う」のです「今日は寒いねと」。
女性はこの時間がたまらなく好きになっていました。一人で過ごしていたときとは違い、自分の愛情を向ける相手が目の前にいること、自分も想いをそのままに表現できること。
観るでもなくつけっぱなしにしている「テレビからは」あいまいな時間を包む「平和そうな声が」耳を傾けるたびに「聞こえてくる」のが分かります。
風吹けばあなたを 雨降ればあなたを
いつの日もあなたを 想っていた
私ひとりの 私ひとりの
事情は定かでありませんが、このような二人の生活は長く続きはしませんでした。
女性は「風吹けば」男性がふらりと戻ってこないかと「雨降れば」男性がまた雨宿りにこないかと「いつの日も」男性を「想っていた」のですが、そんな日は二度と訪れなかったようです。
はじめは自分が男性の『とまりぎ』となり、その心と身体を癒してあげていたつもりが、知らないうちに女性自身の男性への想いは募り「私ひとりの」ものであってほしい、「私ひとりの」ことを愛してほしいと望むようになっていました。
女性ははたと気付きます。
この男性のような存在を、この世界で疲れた羽を休めることのできる『とまりぎ』を求めていたのは自分の方だったのだろうか……。
*くりかえし
いま男性がどこでどのような暮らしをしているのかは聞こえてきません。
けれど、女性は再び一人になった部屋の中で、男性がいた頃と変わらず「*くりかえし」ているのです。
「いつの日も あなたを想っている 昨日も 今日も そして明日も」と。
人間同士の関わりの不思議さ、そこで生起する感情の豊かさや奥行きなど、幻想的な前段と具体的な後段で余すところなく描いた名曲ですね。
聴きどころ
じっくりと聴いてみると、村下さんの歌唱がいつにも増して風情があります。
後段の「新聞」の部分など、気を抜くと登場する女性の目線に乗り移ってしまいそうになります(笑)
イントロからの幻想的な調子がコーラスによって下支えされて、二人の日常の場面であるはずにも関わらず、より以上に美しくて儚いという雰囲気がよく表現されていると思います。
管理人の感想(あとがき)
どちらかといえばまろやかな曲で、劇的に感情を揺さぶられるものではないと(個人的に)思っていたので、本楽曲にそこまで深入りはしていませんでした。
けれど、このように鑑賞してみるとやはり違いますね~。
こちらの受け止めによる部分ももちろん大きいとはいえ、いかにもありそうな情景を描き出す村下さんの才にはやはり脱帽です。
そんな村下さんに、この場を借りてお伝えしたいことがあります、それは……
\ 祝!生誕70年! /
🍰HAPPY BIRTHDAY 村下さん🍻
本記事を(最初に)投稿した2月28日は村下さんのお誕生日でした。
これからもどんどん楽曲を解説・鑑賞していこうと思っておりますので、どうか天国で超絶ギターを奏でながら見守っていてください。
それでは皆様もご自身なりの解釈で「とまりぎ」を堪能なさってくださいね☆
とまりぎ【歌詞全文】
たとえばあなた最後に 帰る場所があり さまよい疲れていたなら 知らぬふりしてた だけどもあなた最後に 帰る場所もなく 倒れそうな人だから 心の窓を開けた *風吹けばあなたを 雨降ればあなたを いつの日もあなたを 想っている 昨日も 今日も そして明日も パジャマ姿ねむそうに 新聞を読んで 紅茶二杯ゆっくりと 飲みほした後 ひげを剃り それから言う 今日は寒いねと テレビからは平和そうな 声が聞こえてくる 風吹けばあなたを 雨降ればあなたを いつの日もあなたを 想っていた 私ひとりの 私ひとりの *くりかえし
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1986年11月21日)
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ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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