村下孝蔵さんの【冬物語】歌詞の意味や世界観を徹底解説・鑑賞!
村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!
当記事では、すでに取り上げた6thシングルA面「踊り子」に引き続き、同シングルB面「冬物語」を解説・鑑賞してまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。
(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの【冬物語】歌詞の意味や世界観を徹底解説・鑑賞!(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。
それでは、早速「冬物語」の解説に入っていきましょう!
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
- 🎵 当記事の著者について
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時計台の影を踏みながら歩いた
去年の秋と何も変わらない
解題
村下さんの楽曲では比較的珍しい、ピアノのイントロで始まる本楽曲。
いかにも悲しげに響くピアノの音が、曲の冒頭の段階で全編の雰囲気を伝えていますね。
枯れ葉とともに去る女性との日々
基本的な情景としては、お付き合いしていた男性と女性が、本楽曲の一年ほど前にお別れし、そのことを男性が冬を迎えようという今思い返しているというものでしょう。
静かにたたずむ「時計台の影を」男性は「踏みながら」、女性と過ごした日々を想い出しつつ「歩い」ていました。
冬の準備をし葉を落とす木々や、時計台の建物の落ち着いた様子、せわしく行き交う人波など、女性と歩いた「去年の秋と何も変わらない」ことが、男性の心を冷たくします。
あなただけがいない この街にはいない
今年の秋を枯れ葉が埋める
他のものは去年と何も変化していないのに、愛し合った女性「だけがいない」ことは、男性にとってこの上なく孤独を感じさせるものでした。
「この街にはいない」女性がどこへ行ってしまったのか、男性は知らないのかもしれません。
一人で「今年の秋を」過ごす男性の脚元まで「枯れ葉が埋める」さまは、まるで女性との思い出が枯れ葉とともに落ちて積もり、吹き流されていくことをこの季節までもが示唆しているようでした。
小さな倖せを掴みきれないまま
迷い込んだ心 漂う街角
降り出しそうな空 震えてる小枝が
僕を映している 窓ガラスに爪を立てる
男性も女性も、大それた望みなど持っていませんでした。
おそらく結婚やつましい暮らしなど、それぞれの胸に抱えた「小さな倖せを」求めながら「掴みきれないまま」に、二人は互いの関係の展望を見定められず、出口のない迷路に「迷い込ん」でしまいます。
冬が人々に感じさせるもの
一緒に出掛けていても、どこかしっくりと収まらない二人の「心」は、冬へと急ぐ「街角」をいつまでも漂いました。
男性と女性も、街を歩きながらたどり着くところがないような気持ちだったのでしょうか。
追想の世界へ移っていた場面は現在へと戻り、男性の心を反映して今にも「降り出しそうな空」の下、木枯しに「震えてる小枝が」見えます。
小枝からは葉が落ち、乾いています。その見かけだけでも心をつつくような小枝の先が、男性の顔「を映している」冷たく硬い「窓ガラスに爪を立て」ます。
それぞれの風が胸を凍らせてく
冬物語 静かに始まる
この部分については、冬という季節が多くの人々にとって本楽曲で歌われるような感情や状況を催させるものだと理解してもよいでしょう。
登場している男性と女性についていえば、「それぞれの」考え、想いを乗せた「風が」、それぞれ自身の中で冷えていき、悲しみや悩みによって「胸を凍らせてく」様子がイメージできます。
人々にとっての数々のそうした「冬物語」が、今年も「静かに始まる」のです。
やがて白い雪が 悲しみを被って
洗い流して春をむかえるよ
冬は誰にも分け隔てない寒さを連れてきて「やがて白い雪が」降ってきます。
その雪は男女の関係においても、その他の関係においても、人間として生きている以上避けられない「悲しみを被って」、例外なく「洗い流して」、また訪れる「春をむかえる」ことを促すのですね。
男性は自然の移ろいとその絶対的な温かさをも感じますが、女性への想いは拭い去ることができずにいます。
時計台の鐘の音は男性にとってなぐさめなのか
掴みきれないもの それが夢なんだと
わかっていたならば 目かくししたまま
一人部屋の中で 生きていればいいと
なだめているように 時計台が心叩く
この最終パートは特に難解です。
表現の重みからして、やはり女性は男性を残して亡くなってしまったのかもしれません。
女性とのささやかに幸福な未来を「掴みきれないもの」だったと嘆く男性の姿が浮かび上がります。
そのように掴みきれなかったもの「が夢」のように跡形もなく消え去るもの「なんだと わかっていたならば」、初めから手に入れようなんてしないでいればよかった。
「目かくししたまま」で誰かに心など寄せず「一人部屋の中で 生きていればいいと」まるで男性を「なだめているように」、雪に閉ざされる街に響く「時計台」の鐘の音が男性の「心」を叩いて鳴り続けます。
いくつかの意味合いに理解することができるでしょう。
- 掴みきれないものを求めることなどせず、自分の世界の中にこもって過ごしていれば悲しむことがないというもの。
- 逆説的に、そのようなあり方は人間にとって適切なものなのか、時を刻み続ける時計台が男性に問いかけているというもの。
- さらに、人がいかにそうやって一人嘆こうとしても、必ず季節は廻り春がやってくるのは不変の真理であるということ(ここをもって「なだめている」と捉える)。
この後、男性がどのように振る舞ったのかは分かりません。
けれど、それはもはや大きな意味を持たないのかもしれません。
楽曲を聴いているうちに、いつの間にか私たち自身のあり方へと視点が移動してくるような感覚も覚える本楽曲は、人間の本質について洞察した村下さんらしい名曲のひとつですね。
聴きどころ
代表曲の「ゆうこ」(⇒解説記事へ)と同じように、音符の運びがやや斜めから来るような感もあるのがまず聴きどころでしょう。
「去年の秋と~」と伸ばす部分は、口ずさもうとすると座りがよいのか悪いのか分からず不思議な感覚がします(個人的に笑)。
メロディに加え、女声コーラスの厚みがけっこうあり、人によっては本楽曲は全体的に「怖い」と感じるかもしれません。
村下さんの歌唱が広やかなのが救いで、それが上でも書いた「なぐさめ」につながっているようでもあり、味わう人によっていくらでも味わい方がありそうです。
管理人の感想ー「時計台」巡礼など
もしかしたら当サイトへ訪れて下さったことのある方はご存知かもしれませんが、管理人は以前、この曲のモチーフとなった札幌時計台を訪れました↓
現場ではしっかりと「冬物語」を流しつつ、外周を歩きました。
この曲も好きな方でしばしば聴いていましたが、今回いよいよ解題を試みて、世界が広すぎることに驚きました。
時計台というモチーフが物理的にも存在し、ほとんどそれを土台にした情景が描かれているだけなのに、これほど誰にでも当てはまり得る中身を生み出せるのは脱帽です。
それでは、皆様も皆様なりの楽しみ方で「冬物語」をたくさん聴いてみてくださいね☆
冬物語【歌詞全文】
時計台の影を踏みながら歩いた 去年の秋と何も変わらない あなただけがいない この街にはいない 今年の秋を枯れ葉が埋める 小さな倖せを掴みきれないまま 迷い込んだ心 漂う街角 降り出しそうな空 震えてる小枝が 僕を映している 窓ガラスに爪を立てる それぞれの風が胸を凍らせてく 冬物語 静かに始まる やがて白い雪が 悲しみを被って 洗い流して春をむかえるよ 掴みきれないもの それが夢なんだと わかっていたならば 目かくししたまま 一人部屋の中で 生きていればいいと なだめているように 時計台が心叩く
(作詞・作曲:村下孝蔵ー1983年8月25日 編曲:水谷公生)
関連記事ーその他楽曲解説
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね☆
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