村下孝蔵さんと【まだ見ぬ人へ】想いを馳せて。歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞
まだ出逢っていない人に恋をしたことはありますか?
今回取り上げる村下さんの「まだ見ぬ人へ」は、そんな場面を描いた楽曲です。
聴き方次第では「陽だまり」よりもずっと明るくのびのびとした雰囲気を持っている一曲だとおもいますので、ここでご紹介しますね!
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんと【まだ見ぬ人へ】想いを馳せて。歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
以下の解説・解題には管理人なりに全力で取り組みました。
ご覧になってくださる皆様は管理人にとって永遠に「まだ見ぬ人」かもしれませんけれど、ぜひ村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考としていただけたらと思います☆
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
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(遷移せずこの場で再生できます▶)
広い空の下 何処か君がいる
水平線の果てまで 駈けて探しに行こう
解題
村下さんならではと思わせる、粒ぞろいで軽快で、ギターの上で指が踊っているようなイントロが印象的な本楽曲。
歌詞の内容的にはすでに想い人がいるとも理解できそうですが、「まだ見ぬ人へ」というタイトルですから、誰かわからないけれどもきっと出逢う素敵な人を想定しているのでしょう。
女性が主体と考えても問題ありませんが、ここでは男性が主人公だととらえていきましょうか。
固く冷えていた冬が終わりを告げ、空も空気も大地も水もすべてゆるみそうな春先に、男性はどうしてか心が明るく跳ね回っているのを感じます。
鳥の声も大きくなって、風にいろいろな香りが乗っかって吹いてくる中で、男性はこの輝かしく生まれ変わった「空の下」には、必ず「何処か」にこの自分と喜びを分かち合える「君がいる」と確信します。
そう思えたら、もう止めるものはありません。
たとえどこであろうと「水平線の果てまで」だろうと、この身体一つで「駆けて探しに行こう」と決意しています。
雲のすき間から 春の萌える陽が
真冬の形見達を そっと消してゆくよ
知らず知らず男性の足は駆けだしています。
頭上をゆったりと身ぶるいして流れる「雲のすき間から」、十分に温かさをためた「春の萌える陽が」男性の走る街並みを余すところなく照らします。
港の隅や道路の脇、電線に田畑に公園、立ち並ぶ木立、学校や建物と連なる山並み、穏やかな海、さらにここに暮らす人々の心の中などに宿っていた「真冬の形見達を そっと消してゆく」のが分かります。
真冬の「形見」じゃから、それらを悪いものとしてはとらえていないということじゃな。
大切にしておきたい形見だけれど、必ず訪れる次の季節がそれを優しくぬぐってくれるというわけじゃ。
愛の始まる予感に心踊り
明日 新しい出会い
いつか見た夢 把みとろう
こんなにすばらしい心地なのだから、新しい愛が始まらないはずがない。
男性は「愛の始まる予感に」これまで感じたことのないほど「心踊り」、この広い空に文字通りジャンプして来るべき「明日」に想いを馳せています。
新しい自分で「新しい出会い」に触れ、「いつか見た夢」をきっとその相手とともに「把みとろう」と宣言します。
丘はなだらかに続くどこまでも
草原はうららかに小川はきらめいている
春の無限の息吹を背に走る男性にとっては、自分の生活するこの街がまるで小さくなってしまったかのようでした。
遠くだと思っていた「丘はなだらかに続く」のがすぐそこに見え、いまや「どこまでも」駆け抜けることができます。
風に波打つ「草原はうららかに」みずみずしく、「小川は」雪を溶かした水や魚を流して「きらめいている」。
男性はこの場所の美しさを直接に感じさせられ、感激していたかもしれません。
朝の透きとおる 空気吸い込んで
駆け出せ!振り向かないで 少年のままで
そんな新しい「朝の透きとおる 空気」を胸いっぱい、体中に「吸い込んで」男性は自分に向かって励まします。
「駆けだせ!」これまでのことを悔やんだり嘆いたりと「振り向かないで」、いつでも無垢の「少年のままで」。
ここまでみてくると、男性は冬のうちに何かつらい出来事を経験したという可能性も考えられます(失恋など?)。
その場合は「真冬の形見達」が当時のお相手との思い出の数々などとも見えてきて、男性が少し強がっているような雰囲気も出てくるのが面白いですね。
悲しみこの街に置いて
君の微笑み求め
春風に乗って まだ見ぬ人へ 想い馳せて
これまでいくつも経験した「悲しみ」は、そのまま「この街に置いて」これから出会う「君の微笑み求め」男性は駆けています。
身体ごと空へと吹き上げて運んでくれそうな「春風に乗って」、顔も声もどこにいるのかも想像できない「まだ見ぬ人へ 想い馳せて」。
愛の始まる予感に心踊り
明日 新しい出会い
いつか見た夢 把みとろう
まだ始まっていないはずの愛が、男性にとってはもう始まっているかのようです。
「愛の始まる予感に心」が高ぶり「踊り」ますが、それは「明日 新しい出会い」が訪れることを確信しているからだと分かります。
「いつか見た夢」はすぐ目の前で手の届くところにあって、男性を待ってくれているから、それを「把みとろう」と改めて宣言しているのです。
この人生、生命に恋した人物が、ただ自分のうちからあふれるままに喜びを歌い、その喜びの気持ちはまだ知らないけれども誰か素敵な人へ届くという美しさの極致たる名曲ですね。
ジャズの巨匠ルイ・アームストロングの「ワンダフルワールド(この素晴らしき世界)」の村下さん版といえるでしょう(?)。
聴きどころ
冒頭の晴れやかなギターかき鳴らしから、フェリーの汽笛が青い空へ抜けていくようなシンセサイザーでしょうか、いかにも本楽曲のテイストを表していますよね~。
村下さんの歌唱もワクワクとドキドキを組み合わせて、しかし自分の身を守ることはなくどんなものでも入ってきなさいと言わんばかりの広々とした様子です。
ラストの「把みとろう」のビブラートやメロディはどことなくフォークソングっぽさもありますね。
発売時期(1981年。大ヒット曲「初恋」の2年前)から考えて、村下ワールドの草創期にあったのかもしれません。
管理人の感想(あとがき)
この曲もかつて管理人が弾くことができた作品のうちの一つです。
ギター技術がなさすぎて、そのときに持っていた楽譜の中でコード進行が簡単だったこの曲に取り組むしかなかった事情もありますけど……笑
自分の手元で奏でてみても綺麗で心地よい和音で、さほど好きではなかったこの曲が大好きになりました。
村下さんにしては珍しいすごく明るい方向の曲ですし、もし関心のある方はぜひ弾き語りにチャレンジなさってみては???
まとめ
今回は村下孝蔵さんの「まだ見ぬ人へ」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「ネコ」でした)
まだ見ぬ人へ【歌詞全文】
広い空の下 何処か君がいる 水平線の果てまで 駈けて探しに行こう 雲のすき間から 春の萌える陽が 真冬の形見達を そっと消してゆくよ 愛の始まる予感に心踊り 明日 新しい出会い いつか見た夢 把みとろう 丘はなだらかに続くどこまでも 草原はうららかに小川はきらめいている 朝の透きとおる 空気吸い込んで 駆け出せ!振り向かないで 少年のままで 悲しみこの街に置いて 君の微笑み求め 春風に乗って まだ見ぬ人へ 想い馳せて 愛の始まる予感に心踊り 明日 新しい出会い いつか見た夢 把みとろう
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1981年4月21日)
関連記事ーその他楽曲解説など
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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