村下孝蔵さんの11thシングル【哀愁物語~哀愁にさようなら~】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞
村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!
当記事では、「浜辺にて」さらに前回解説した「とまりぎ」に引き続き、11thシングルA面「哀愁物語~哀愁にさようなら~」を解説・鑑賞してまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの11thシングル【哀愁物語~哀愁にさようなら~】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。
それでは、早速「哀愁物語~哀愁にさようなら~」の解説に入っていきましょう!
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
- 🎵 当記事の著者について
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ハラハラと桜吹雪
まるで この心のように
散る哀しさと美しさ いじらしさ
解題
村下さんの作品の中ではとても珍しい、作詞家さんから詞の提供を受けた本楽曲。
しかもこれまでの日本歌謡界で作詞家と言えば……というほどの阿久悠さんからですから、かなり気合を入れて制作された曲なのだとも見受けられます。
基本的な場面設定としては、村下さんの路線を意識したのか、やはり結ばれることのなかった男女の精神的なふれあいを描いているといえるでしょう。
さまざまな要因から二人が結ばれることはないと思い知った女性は、舞踊の仕草のように反対側の頬に指を伸ばした手の甲を当てます。
季節は春なのでしょう。女性が切なく歩く土手に「ハラハラと桜吹雪」が散り舞っています。
本当なら誰もが自分の連れを見出すはずの季節に「まるでこの」自分の「心のように」桜の花が「散る哀しさ」は身にこたえます。
けれどそうやって散ることができるのも、これまで自分の魅力そのままに開き咲き誇っていたからこそ……。その「美しさ いじらしさ」は、今となっては女性が自分自身についても感じるところでした。
追わないで 泣かないで うしろ向かないで
自分の有様をいじらしく思ってみても、もはや二人が一緒になれないことは痛いほど分かっています。
女性は橋のたもとで道を別れた男性がその場に立ち尽くしてずっとこちらを見つめているのを振り返ります。
男性に聞こえるはずもありませんが、あふれる涙を頬に感じながら「追わないで 泣かないで」、そしてあなたも私も「うしろ向かないで」とつぶやきました。
春風が頬の涙を温かく冷ましていきます。
くちびる重ねた時を思えばきっと生きられる
二人で刻んだ愛の言葉は色あせない
季節の薫りを乗せた風は女性の口元をかすめ、桜の花びらとともに想い出を彼方へと吹き流すかのようです。
女性は男性に背を向けると、胸に手を当てて思います。二人が「くちびる重ねた時を思えば」、これからどんなことがあっても「きっと生きられる」。
互いにどのようなことになろうと永遠にともにある、と「二人で刻んだ愛の言葉は」時が経過しても「色あせない」だろう。
季節が巡れば春はふたたび訪れて
その時は哀愁にさようならを
今年の春は二人にとってつらい記憶の残る季節になってしまったけれど、「季節が巡れば」女性と男性の生活も気持ちも全部変化しているだろう。
そうして「春はふたたび訪れて」、離れ離れの二人がともに過ごした時間を糧に前へ踏み出すことができる「その時は哀愁にさようならを」告げよう。
主に女性の視点を採用して把握していますが、この部分などは二人の想いが混ざり合って表現されているような印象も受けますね。
結ばれぬ愛であれば
なおのこと激しく思え
抱く切なさと狂おしさ いとおしさ
女性は男性と逢瀬を重ねたことを思い返します。
どちらも「結ばれぬ愛」と分かっていたの「であれば」こそ、「なおのこと」その瞬間の二人の愛は「激しく思え」たけれども、行く先が見えているがゆえに互いを「抱く切なさと狂おしさ」が勝ってきます。
それを感じながら相手の素顔を見つめる「いとおしさ」は、二度と経験することのないものだろう。
云わないで 責めないで 夢を捨てないで
どうにか一緒になる道を探そう……などと「云わないで」、定まっていたこととはいえお互いがこの離れる選択をしたことを「責めないで」、また春が訪れるという「夢を捨てないで」進んでいこう。
女性と男性は、小さくなるそれぞれの姿を再び見つめて思うのです。
まぶたをはらした辛い涙をそっとすくい取り
悲しみばかりが愛じゃないよとはげまし合い
もちろん決断は簡単なものではなく、おのが運命を呪ったときもありました。
女性が涙を浮かべれば、男性もつられて「まぶたをはらした辛い涙を」、お互いの指で「そっとすくい取り」ました。
「悲しみばかりが愛じゃないよと」男性が語るのに対して、女性も肩を強くしてうなずいて「はげまし合い」ました。
きっとまた会える、と二人は身体を抱きしめ合います。
別れはひととき 逢えば永遠結ばれる
その時は哀愁にさようならを
この部分は女性と男性の願い、気持ちを表しているとみるとよいと思います。
大げさにいえば、今生ではここで二人は別れざるを得ないけれど、その「別れは」来るべき未来に比べればほんの「ひととき」の間に過ぎない。
すなわち、また「逢えば永遠」に自分たちは「結ばれる」、少なくともその運命を選び取るのだから。
「その時は」、二人の想いを燃やしてくれたこの激しい「哀愁に」ありがとうと「さようならを」告げよう。
季節が巡れば春はふたたび訪れて
その時は哀愁にさようならを
女性と男性の姿は、互いに見えないほど遠くなりました。男性もついに女性を見送るのをやめ、桜が風に舞う橋を渡ったかもしれません。
二度と会うことはないだろうけれども「季節が巡れば」二人の想いに関わりなく「春はふたたび訪れて」、この春にそれぞれがした選択を思い出させてくれる。
「その時は」ともに分かち合った「哀愁に」ありがとうと「さようなら」を、それぞれのいる場所で告げることになるだろう……。
深く想い合った男女が心の底にその愛を銘記するさまを、情熱的かつ雅に描いた名曲だといえるでしょう。
聴きどころ
本楽曲で村下さんと一緒に歌っているお相手は中林由香さんという方です。
村下さんの曲の中でも合計3つしかデュエットは存在しない(本シングルB面の「美しすぎるミステイク」および渡辺真知子さんとの「愛着」)ので、まずはこの二人の歌声が聴きどころですね。
対比する相手がいることで、村下さんの歌唱がより広々とした印象を与えてくれる気がします。
また、最終盤の「さようなら」のロングトーンでの村下さんの声はもはや楽器レベルの鳴り方です(笑)
管理人の感想(あとがき)
歌謡曲に寄せた音楽づくりがされていると思いますし、村下さんの作詞でないということもあり、管理人はあまり注目して聴いていませんでした。
しかし、勝手にこのように解題をさせていただいて、改めて作詞家さんってすごいなぁと思います。
村下さんが曲を先に用意したのか、阿久悠さんが詞を先に書いたのかは分かりませんが、見事に世界観を生み出しています。
皆様も、ぜひご自身の聴き方で「哀愁物語~哀愁にさようなら~」を堪能してくださいね☆
⇒本シングルのカップリング「美し過ぎるミステイク」の解説はこちら
哀愁物語~哀愁にさようなら~【歌詞全文】
ハラハラと桜吹雪 まるで この心のように 散る哀しさと美しさ いじらしさ 追わないで 泣かないで うしろ向かないで くちびる重ねた時を思えばきっと生きられる 二人で刻んだ愛の言葉は色あせない 季節が巡れば春はふたたび訪れて その時は哀愁にさようならを 結ばれぬ愛であれば なおのこと激しく思え 抱く切なさと狂おしさ いとおしさ 云わないで 責めないで 夢を捨てないで まぶたをはらした辛い涙をそっとすくい取り 悲しみばかりが愛じゃないよとはげまし合い 別れはひととき 逢えば永遠結ばれる その時は哀愁にさようならを 季節が巡れば春はふたたび訪れて その時は哀愁にさようならを
(作詞:阿久悠 作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1987年5月21日)
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ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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