村下孝蔵さんの描く心象風景は【モ・ザ・イ・ク】のよう。歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞
今回は失恋した時に聴きたい曲として、ファンの間では有名(推測です笑)な楽曲「モ・ザ・イ・ク」を取り上げましょう。
「初恋」と同時期の楽曲ですし、村下さんの声もよく出ていて全盛期の楽曲のひとつとして扱って差し支えないでしょう。
他の楽曲に比べてイメージが持ちやすい曲かとも思いますが、皆様はどんな風にお聴きになっているでしょうか。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの描く心象風景は【モ・ザ・イ・ク】のよう。歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
今回の解題も管理人なりに全力で取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆
下部に歌詞全文を用意しました、適宜ご利用くださいね。
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(遷移せずこの場で再生できます▶)
初めて君の狭い部屋を訪ねた
ありあわせのコーヒーカップ
解題
深い闇へと落ち込んでゆくかのようなイントロが印象的な本楽曲。
イメージの難解な楽曲が多い村下さんですけれど、この曲の冒頭はどんな情景なのか比較的明確のようです。
基本的な場面設定としては、ある男性がかつてお付き合いしていた女性のことを振り返り、現在の自分のあり方にも思いを向けているという感じでしょうか。
お付き合いを始めたばかりの当時、男性は「初めて」女性「の部屋を訪ねた」のでした。
女性は自宅で普段使っているものと、予備としてや来客のために置いてあった「ありあわせのコーヒーカップ」で男性をもてなします。
わしも思い出すぞ……、80年間の坐禅に入る前、一度だけあの人の部屋を訪れたことを……
こんなものねとうつむき笑っていたね
熱い予感を飲んだ二人
女性は一口ずつ飲み物を口に含みながら「こんなものねと」恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに「うつむき笑っていたね」。
それまでに二人は何度かデートを重ねて、いよいよ次の段階だという感覚がお互いに芽生えていたのでしょう。
この日、これからどんなことが起こるのか理解しつつ、「熱い予感を」コーヒーカップから立ち昇る湯気とともに「飲んだ二人」だったのです。
僕の言葉を全部覚えてきては
会うとふざけていつも真似て見せたよ
男性も女性もお互いのことが大好きで、出逢えたことが信じられないほどでした。
女性は男性「の言葉」づかい「を全部覚えてきては」、次に「会うと」楽しそうに「ふざけていつも」何度も「真似て見せたよ」。
身体も心も言葉も全部一つになりたいと感じるほどに、二人は愛し合っていたのです。
けれど、
*めぐり逢った時には
二人子供のようだったのに
愛をなくした後では
誰も大人のふりをする
そんな幸福の絶頂にあった二人の日々は長くは続きませんでした。
自分たちこそがこの世で最も幸福だと「*めぐり逢った時には」疑うことなく、「二人子供のよう」にいつも手をつないで暮らしてい「たのに」、あっけなくその時は訪れました。
詳しい事情は不明ですが、二人の想いが噛み合わずいつしか交錯し始めて「愛をなくした後では」、男性も女性も一緒に過ごしていても何でもないかのように「誰も大人のふりをする」ものだということを思い知ります。
ふたりでひとつのように生きてきたのに、人間の心の動きの真理をそれぞれ自分一人の心の中に知ったわけですね。
結んだ糸を僕が強くひいたら
プツリと切れて目が覚めたよ
傾いたままずっと元に戻らぬ
悲しい恋の道標
二人で見ていた鮮やかな色の日々が「モ・ザ・イ・ク」のようにバラバラに崩れていく中で、男性はある夜夢を見ました。
手元に取り戻すべく、固く「結んだ糸を」男性が「強く引いたら」、結び目かその両側のいずれかから「プツリと切れて」しまったところで「目が覚めたよ」。
どちらの心が変わってしまったのか、はたまたお互いになのか「傾いたままずっと」、かつてはっきり見えた向きへ「戻らぬ 悲しい恋の道標」のみが二人の前に立っているようです。
それゆえ、
夢の中でも君を見失っている
何もできないままにまた今日が終わる
現実に固い糸で結ばれていたはずだったのに、いまや「夢の中でも」男性は女性のこと「を見失っている」ことに気づきます。
おそらく二人の恋の道標はそれぞれに別の方角を指し始めたのかもしれません。
女性の心に入り込んでその向きを変えることなど当然不可能で、自分自身をその向きに沿わせようとしても女性がどちらを向いているのか分からず「何もできないままに」、やるせない思いで「また今日が終わる」。
男性にできるのはひとり呼びかけることだけでした。
こわれるものは必ず
音をたてて崩れてゆくのに
言葉ひとつも残さず
どこへ君は消えたのか
物でも人間関係でも「こわれるものは必ず」その時に「音をたてて」、それと分かって「崩れてゆく」ものだ。
それな「のに」どうして別れの「言葉ひとつも残さず」二人の終わりさえきちんと意識させることなく「どこへ君は消えたのか」。
この部分からは、男性と女性が表向きそれまでと変わらず生活を続けていたのだろうことがうかがわれます。
そんな中で女性がぷっつりと姿を消したのでしょう。(「踊り子」の感がありますよね)
*くりかえし
恋に区切りをつけることができないでいる男性の胸のうちには、女性と出逢った当時のことばかりが「*くりかえし」思い出されています。
けれど男性も大人なのでそれを表情に出すことはなく、自分の毎日を刻々過ごしているのです。
深い恋愛を経た男女が各々に思い、感じることが「モ・ザ・イ・ク」のように関係を複雑にしていく人間のあり方を端的に美しく描いた名曲です。
聴きどころ
まず触れるべきはメロディの盛り上がり具合が見事なことでしょう。全編が感情の流れそのものになっていることが分かります。
二つ目のサビで「言葉ひとつも残さず」の「ず」のファルセットがよく響いていますね~!
あと、たぶんエンディングの長さが村下さんの楽曲の中で最長だと思います。
これは男性がいつまでも想い出をたどり、モザイクの日々を生きているというような含意でしょうか(笑)
管理人の感想(あとがき)
収録アルバム的に、管理人も「初恋」に触れたころに出会った楽曲です。
イントロの転落ぶりがすごくて、最初はちょっと面白くも感じていたかもしれません。
けれど聴き込めば聴き込むほどに、村下さんの美声やメロディの美しさが身に染みてきましたね~。
(カタカナタイトルで文字の間に「・」を入れるのは、多少当時のトレンドの風味もありますよね)
まとめ
今回は村下孝蔵さんの熱烈悲哀曲「モ・ザ・イ・ク」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「水無月十三夜」でした)
モ・ザ・イ・ク【歌詞全文】
初めて君の狭い部屋を訪ねた ありあわせのコーヒーカップ こんなものねとうつむき笑っていたね 熱い予感を飲んだ二人 僕の言葉を全部覚えてきては 会うとふざけていつも真似て見せたよ *めぐり逢った時には 二人子供のようだったのに 愛をなくした後では 誰も大人のふりをする 結んだ糸を僕が強くひいたら プツリと切れて目が覚めたよ 傾いたままずっと元に戻らぬ 悲しい恋の道標 夢の中でも君を見失っている 何もできないままにまた今日が終わる こわれるものは必ず 音をたてて崩れてゆくのに 言葉ひとつも残さず どこへ君は消えたのか *くりかえし
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1983年8月25日)
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ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね。
また、村下さんに関するちょっとしたネタやカバーしている方の情報なども順次まとめています。
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