村下孝蔵さんの【陽炎】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞!
村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!
当記事では、以前代表曲としても取り上げた4枚目のシングル「ゆうこ」に引き続き、同シングルB面「陽炎」を解説・鑑賞してまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんの【陽炎】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞!(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。
それでは、早速「陽炎」の解説に入っていきましょう!
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
- 🎵 当記事の著者について
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陽炎『夢の跡』所収
写真の中の君は
おどけた仕草している
解題
とても穏やかなギターの、よい思い出が自然と浮かんでくるような背景の音色とともに本楽曲は始まります。
村下さんの歌声が優しさを極めているのも特徴ですね。
ある男性が、お付き合いしていた女性のことを振り返っている点は、他の楽曲と共通しているところです。
本楽曲では、男性が女性の写真を所持していて、それを眺めつつ想い出をたどっています。
おどけた女性の表情を見つめる
麦藁帽子を阿弥陀に被り
多分 友達が写したんだね
「写真の中」に写る女性は「麦藁帽子を阿弥陀に被り」、気の置けない仲間同士の場面で特有の「おどけた仕草」をしています。
この写真を女性からもらったのはいつなのか、男性は覚えていませんが「多分 友達が写した」ものだと分かります。
それは、女性とお付き合いしていた当時、このおどけた様子を男性自身も目の前で見たことがあったからですね。
これほどおどけた楽し気な様子を見せるのは、とてもリラックスしていて、女性が素直な自分自身でいられるとき、例えば友達と一緒にいるときなどだろう、と推測ができるというわけです。
笑っているね 光の中
声が聞こえてくるよ・・・
男性は女性のことを思い出しながら、写真に向かって語り掛けます。
一緒にいたときと同じように「笑っているね」、君が一番美しく見える夏の「光の中で」……。
今でも僕の耳には君の「声が聞こえてくるよ・・・」。
この笑顔なら、きっとこんな話をしたときみたいに……、いや、あの場所へ二人で出かけたときと同じ表情かもしれない……。
女性への気持ちや想い出は、尽きることなく男性の中であふれてきます。
気づけば女性の面影を探している
忘れてしまいたいのに
夏の陽差しが切ない
心 慰める旅に出かけて
面影ばかりをまた捜してる
一人になった男性は、女性のことを「忘れてしまいたい」のです。
なぜなら、本当に女性のことを愛していたから。
季節がめぐり、かつて女性と幸せに過ごした「夏の日差し」が戻ってきました。
この肌に触れる日差し、暑さによって、確かに女性とともに日々を歩んでいたことが強く思い出され、男性は切なさを感じます。
女性との記憶があふれた街を一度出て、男性は「心」を「慰める旅に出かけ」ました。
けれど、目にする景色や空気の香りがとれほど変わっても、男性が「また捜してる」のは女性の「面影ばかり」です。
この場所へ女性と訪れたなら、どんな表情で笑うのだろう。
自分が写真を撮ったなら、あのおどけた様子でポーズをとるのだろうか……。
一人佇み名前を呼べば
遠く 夕日が落ちる
旅先でふと「一人佇み」、女性の「名前を呼べば」、返事の代わりに「遠く 夕日が落ち」ていきます。
この部分の情景は、おそらくもともと男性たちが過ごしていた場所よりもやや田舎でしょう。
行くあてもなく歩いて回った男性は、自然と人少なな広い田畑のあるところへ足が向かいました。
そこでふと立ち止まったとき、思わず口から出てきたのが女性の名前だったというわけですね。
赤く染まっていく地平や草木、家屋と男性自身の姿が、女性の名前の音と溶け合って暮れていくような印象で、実に美しい描き方です。
女性の陽炎を大切に胸にいだく
恋をなくしては道に迷って
大人になれると言ってみたけど
強がりなのさ 本当は
忘れる事ができない
男性は以前、女性に向かって語ったことも思い出しました。
これまで何度か恋をしてきて、その「恋をなくしては道に迷って」しまうけれど、そうしてこそ自分は「大人になれる」。
あのときはそう言って胸を張ってみせたのですが、女性は笑って取り合いませんでした。
今になってみれば、男性は自分の発した言葉が「本当は」完全な「強がり」だったことに気付いています。
こんなにも女性のことを「忘れる事ができない」自分がここに存在している、そのことに男性も驚いているのかもしれません。
笑っているね 光の中
声が聞こえてくるよ・・・
写真の中にとどまることなく、山村の向こうに落ちる夕日とともに消えゆくのでもなく、男性の心の中で女性はずっと輝いています。
決して忘れることがないであろう女性の面影に向かって、男性は再び語り掛けます。
「笑っているね」君だけが持つ「光の中」で……。あのときのように素敵な「声が聞こえてくるよ・・・」
それは今やもう形のない、ただ美しさだけ宿した「陽炎」なのだろうか……。
聴きどころ
優しいギターや伴奏の音色にはすでに触れましたが、間奏部分での口笛にも注目したいと思います。
本楽曲で歌われている男性が一人田舎道を歩きながら吹いているような、寂しげで切なげな、けれどどこか諦めていて温かさもあるような、とてもすばらしい口笛です。
コーラスの丸さというかふわっとした感じと、サビの部分で女性へ語り掛ける言葉の辺りでの盛り上がり、そこから一気に自分のいる場所へ引き戻されるような音楽の展開も見事です。
管理人の感想
すでに当サイトでの村下さん楽曲解説をご覧になった方は「またか」とお思いになるかもしれませんが、この曲も管理人はそこまで注目していませんでした~(笑)
ちょっと気軽にいい曲だな~、優しい歌だな~くらいの認識でした。
しかし、改めてここでじっくりと向き合ってみて、あまりに良い曲でびっくりしています。
このくだり、何回かありましたね笑
「陽炎」というタイトルも、何度も味わうととってもすばらしいです。
付記
ところで、以前ご紹介した「未成年」と同様、本楽曲も別バージョンが存在します。
これもまた同じく『清涼愛聴盤』に収録されていて、ギターがさらにメインになり、村下さんの声がもっと前に出てきているアレンジになっています。
それと同時に、コーラスも雰囲気づくりのためしっかりになっていますが、ここは好みが分かれるかもしれませんね。
テンポもわずかに遅くされているような気がします。
それでは、皆様もご自身の楽しみ方で「陽炎」をたくさん聴いてみてくださいね☆
陽炎【歌詞全文】
写真の中の君は おどけた仕草している 麦藁帽子を阿弥陀に被り 多分 友達が写したんだね 笑っているね 光の中 声が聞こえてくるよ・・・ 忘れてしまいたいのに 夏の陽差しが切ない 心 慰める旅に出かけて 面影ばかりをまた捜してる 一人佇み名前を呼べば 遠く 夕日が落ちる 恋をなくしては道に迷って 大人になれると言ってみたけど 強がりなのさ 本当は 忘れる事ができない 笑っているね 光の中 声が聞こえてくるよ・・・
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1982年4月21日)
関連記事ーその他楽曲解説
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね☆
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