【第九位】村下孝蔵さんの「一粒の砂」のように人は流れ去るもの。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!
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今回取り上げる「一粒の砂」は、村下孝蔵さんの楽曲の中でも群を抜いて壮大で、奥行きのある作品です。
私たち誰もが心の奥で感じ取っている事柄を、力強く美しいメロディに乗せ、しかも改変せずにそのまま描き取っている本楽曲は、村下さんに触れた方ならばぜひ早めに聴いてみてほしい一曲といえるでしょう。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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【第九位】村下孝蔵さんの「一粒の砂」のように人は流れ去るもの。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
今回の解釈も管理人なりに全力で取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆
しかし初めて本楽曲をお聴きになる方は、どうぞ以下の解説を読まずに、まずはご自身の耳と心で味わってみてくださいね!
下部に歌詞全文を用意しました。適宜ご利用くださいませ。
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(遷移せずこの場で再生できます▶)
夜空を埋めてる星くずに
ひとつひとつ名をつけた
果てなく広がる地平線
街の灯り 探した
解題
まずタイトルから、人間がこの世界においてみな一粒の砂のようなものだという理解が読み取れます。
これまでにも村下さんは人間の深い部分をよく見抜いて音楽制作をしていたのではないか、ということを述べてきましたが、本楽曲は真正面からその主題に取り組んでいる点が特徴的ですね。
タイトル通り、大きな世界観を表現することを目指した美しくも力強いイントロが用意されています。
人の気持ち繋いでる
何か大切なもの見つめてた
人は誰もが一粒の砂だという理解からすると、「夜空を埋めてる星くずに」名をつけたのは男性でもあり、女性でもあり、共に過ごす二人でもあり、あなたでもわたしでもあります。
そんな人間たちは誰もが、果てしなく広がるこの世界の地平線において、各々の「街の灯り」を探しています。
また、誰もがそのように生きつつ、人間同士の気持ちを「繋いでる何か大切なもの」を見つめ、求めています。
それぞれが一粒の砂として独立してありながら、互いの気持ちを繋ぐ何かを常に探し求めている。
後に「ひとりぼっちで」と高らかに歌いますが、ここに村下さんの人間理解の重要な側面が表れている気がしてなりません。
金と銀との心を抱え
月の砂漠を一人歩いた
この「金と銀」はあのきんさんぎんさんのことではありません。
本楽曲はイメージは分かるけど難解と評価すべきものの代表かと思いますが、この部分も特に解釈が難しいところです。
金や銀は価値のあるもののことを指しているのでしょうか。
とすれば、私たち人間の抱える心は美しく価値ある「金と銀」のようなものであり、それを携えて月の砂漠を歩んでいると見ることになります。
その金と銀の心が月に照らされた砂漠で輝き、活動しています。
昼と夜との隙間を抜けて
涙の河を泳ぎ続けた
ひとりぼっちで
月の砂漠を歩いていたのですが、そのうちに「昼と夜」が渾然一体となって、その「隙間を抜けて」私たちは進みます。
そこには、私たち自身や、先人たち、そのほかいろいろなものが流した「涙の河」が水面を震わせて流れていました。
人間はこの涙の河を「ひとりぼっちで」泳ぎ続けるのです。
言葉に出来ないことを表現する手練れでもある村下アニキですけれど、昼と夜、男性と女性、あなたとわたしなどの二元性に対する目線、その奥にあるものへの目線も備えていたと感じます。
(抱きしめ合うほど二人は別々、と歌う「珊瑚礁」など。)
道草している旅人に
数えきれず恋をした
命に限りはあるけれど
愛の形さぐった
Bメロに関しては、男性と女性の関わりと捉えてもよいですし、ここまでと同じく人間みなと解釈してもよいと思います。
男性も女性も、互いに、そうでなくともこれまでに、砂漠を歩む途中で「道草している旅人」にたくさん恋をしましたし、これからもするでしょう。
そうした関係に終わりがあるように、「命に限り」があることを本楽曲に登場する人間たちはよく分かっています。
だから、たぶん「何か大切なもの」であるはずの「愛の形」を探ったのですね。
一期一会なんてまとめてしまうとちょっと狭小な感じもしますけど、この限りある生において、本当に大切な何かをみんな探しているという意味合いでしょうか。
雨に濡れた夢を見て
切なく悲しい雲を引きずり
詩的な色合いが増していきます。
数多くの恋をし、それぞれの愛の形を探る私たちですが、二人一緒に歩いてもときに涙は流れます。
その涙が雨になるのか、折々には「雨に濡れた夢」も見るでしょう。
互いという存在を見出したと思っても、二人の関係や命にさまざまな事柄は必ず訪れますから、喜びだけでない感情は多く生じてきます。
そのような「切なく悲しい」想いは雲になり、私たちについて回るのですね。
人間はこの「雲」をいつも引きずって生きていくのだ、という村下アニキの認識かもしれません。
雲からは雨が落ちてきます。
涙の河の上に浮かぶ雲の哀しさと美しさが、ここで意識されそうです。
金と銀との衣装を捨てて
月の砂漠を二人歩いた
先ほどは人間の心が金や銀のように美しいものだ、という理解を採用しましたが、ここでは衣装について金と銀という表現が使われています。
楽曲の主題やイメージからして、ここで二人が「衣装を捨て」たという意味は、きらびやかな装飾を脱ぎ捨てたというものではないと考えられます。
人間それぞれが身につけている何か(外面的な顔、服、財産、考え方など?)をすべて手放して、二人が歩んだという点がポイントでしょう。
この理解が、楽曲終盤でさらに村下兄貴が示したかったものへつながる気がします。
夏から冬へ季節を重ね
裸のままで流れ続けた
ゆくあてもなく
二人は季節が変わっても、季節が再び訪れても、「裸のままで流れ続け」ました。
ここで二人を押し流していたのは「涙の河」でしょう。
誰もがひとりぼっちなのだから、二人になり、何人になろうがひとりぼっちであることは変わらない。
ともに歩めば行き先が見つかるということでもない。
だから「ゆくあてもなく」人は流れ続けるのですね。
炎ふたつ合わせても
大きな炎になり燃えつきる
ひとりぼっちの人間が二人になっても、「大きな炎に」はなるかもしれないが、結局は「燃えつきる」。
人間はこれに抵抗して涙の河を泳ぎ続けるのか、月の砂漠を歩き続けるのか……。
金と銀との幻を見た
月の砂漠に浮かぶ蜃気楼
白い朝 たどり着く 旅路の果てに
待っている太陽の光信じて
そうするうち、私たちは「金と銀との幻」を見ます。
これは男性、女性、人間たち、すなわち私たち自身でしょうか。
美しい金と銀の心を携え、すべての衣装を捨て去った人間たちは、金と銀に輝く存在として「蜃気楼」のように月の砂漠に浮かんでいます。
月が隠れ迎える「白い朝」に、長い長い「旅路の果て」で「待っている太陽の光」を信じて。
難解さが最大に至っていますけど、この「太陽の光」とは何でしょうか。
宗教の方へ引っ張るならば、何らかの救いや悟りということでしょうか?
個人的には、この太陽の光こそが「何か大切なもの」なのではないかとも思います。
しかし、人間はそれを手にすることができない。見つけ出すことができない。だけれど、見出すために歩むしか人間にできることはない……という理解。
金と銀との心を抱え
月の砂漠をみんな歩くよ
反復になりますが、人間にできることは自身の「金と銀の心を抱え」て月の砂漠を歩むことだけです。
意識的であろうと無意識にであろうと、人間は誰もがそのように「歩くよ」。
昼と夜との隙間を抜けて
一粒の砂 落ちてゆくように
ひとりぼっちで
私たちはすべてこの月の砂漠に生きる「一粒の砂」であるということが楽曲の最後で示されます。
その小さく細かな一粒一粒が金と銀に輝きながら「落ちてゆくように」、人間は各々「ひとりぼっち」で歩いていきます。
果てのない地平線を持つ砂漠が月に照らされ、そこに落ちる砂のひとつひとつが光り輝く様子がイメージできますか?
それら一粒一粒のすべてが人間であり、いま、私たちの暮らすこの街で何気なく目にするそれぞれの人々なのです。
一人一人が自分の心を携えて、実際には他に何も持たず裸で美しく歩む。
世界がそのようにある以上にすばらしいことはないのでしょう。
(勝手な人物像ですが)いかにも村下さんらしい認識だと感じます。
聴きどころ
全編を通じて大きく壮大な世界を感じさせる曲調になっています。
一番の聴きどころは最後の村下さんの「ひとりぼっちで」という歌唱です。
「ロマンスカー」と同じように、消え入りつつよく伸びる歌声が逸品ですね。
そこへエネルギーのある演奏が重なって、終わりはピアノの儚くて麗しい和音で締めくくる。
やはりこの曲も大好きです~~~!
耳を澄ませてみるとベースもなかなかロックな感じの運びで、村下兄貴の歌う主旋律をエレキギターで弾いてもかなりかっこいいのではないかと思います。
村下さんの歌い方も、男女の恋愛をメインに取り上げている曲と比べてさらに魂を込めているようにも聞こえます。
管理人の感想(あとがき)
最初にこの曲を耳にしたときは、村下さんには珍しくカッコいい系の曲なんだな~というくらいの感想でした。
耳馴染みもいいので、プレーヤーで聴いていて流れてきたら軽く口ずさんでみたりして。
今回じっくりと歌詞を解釈してみて、ここまで深みある楽曲だと初めて気付きました。
人間存在について語っているものだということは理解していましたが、ラストで「金と銀との心」という人間の心の部分だけが再び歌われたり、全体の展開がしっかりと作り込まれた形になっていることに驚きました。
しかし、それは村下さんの曲作りならば自然なことなのだということにも思い至ります。
第九位に掲げましたが、もっと上に変動があるかもしれません(笑)
ぜひ、聴いてみてくださいね!
(付記)隠れた曲ランク
盛り上がる曲ですし、シングルカットもされていてライブでもよく取り上げられていました。
「16才」と同様、安全地帯の武澤豊さんが編曲に関わったことも、濃いめのファンの方ならご存知かもしれません。
ただ、やっぱり「初恋」「踊り子」の次にこの曲へたどり着くかというと、そうでもないような感じはあります。
村下兄貴の音楽性や人間に対する目線の発展の中で現れてきた曲でしょうから、もちろんそれぞれタイミングがあるとはいえ、聴き手側も多少はそれを追いかける形になる気がします。
隠れた曲ランク=4
まとめ
今回は村下孝蔵さんの壮大曲「一粒の砂」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「夢からさめたら」でした)
一粒の砂【歌詞全文】
夜空を埋めてる星くずに ひとつひとつ名をつけた 果てなく広がる地平線 街の灯り 探した 人の気持ち繋いでる 何か大切なもの見つめてた 金と銀との心を抱え 月の砂漠を一人歩いた 昼と夜との隙間を抜けて 涙の河を泳ぎ続けた ひとりぼっちで 道草している旅人に 数えきれず恋をした 命に限りはあるけれど 愛の形さぐった 雨に濡れた夢を見て 切なく悲しい雲を引きずり 金と銀との衣装を捨てて 月の砂漠を二人歩いた 夏から冬へ季節を重ね 裸のままで流れ続けた ゆくあてもなく 炎ふたつ合わせても 大きな炎になり燃えつきる 金と銀との幻を見た 月の砂漠に浮かぶ蜃気楼 白い朝 たどり着く 旅路の果てに 待っている太陽の光信じて 金と銀との心を抱え 月の砂漠をみんな歩くよ 昼と夜との隙間を抜けて 一粒の砂 落ちてゆくように ひとりぼっちで
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:武澤豊ー1992年9月21日)
関連記事ーその他楽曲解説など
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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