村下孝蔵さんと暮らす【ネコ】はどんなネコ?歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞
今回取り上げるのは人気も高い楽曲「風のたより」(13thシングル)と両A面の作品として発表された「ネコ」です。
女性をネコにたとえるのは昔からおこなわれてきたことだと思いますが、本楽曲には村下さんらしい描き取りが見えています。
『清涼愛聴盤』というセルフカバーアルバムにもアレンジ版が採録されていますね。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
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(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
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村下孝蔵さんと暮らす【ネコ】はどんなネコ?歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
どうしても個人的な解釈にならざるを得ませんけれど、管理人なりに全力で取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆
下部に歌詞全文を用意しました、適宜ご利用くださいね。
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(遷移せずこの場で再生できます▶)
いつもぼくはおまえのこと
“ネコ”と呼び捨てにしてた
解題
「ゆうこ」とはまた違った切なさを持つピアノのメロディから始まる本楽曲。
村下さんの楽曲では多いことですが、何らかの情景に想いを馳せる空気感をよく表現しています。
基本的な場面設定としては、ある男性がかつてともに暮らした女性のことを想い、その女性がどのような様子だったかを振り返っているというものです。
太陽が沈み町に夜が訪れようというひととき、あるいは眠っていてふと目が醒めたときなど、男性はいつも女性のことを思い出します。
「いつも僕は」いまはもう隣にいない女性「のこと」を、その無邪気な振る舞いや優しくて勝手で可愛らしい態度から「“ネコ”と呼び捨てにしてた」ものでした。
細い目をし寒がっては
眠そうに起きてた
女性はたいてい気持ちの読み取りにくい「細い目をし」体温を分けてほしいと「寒がっては」、男性と一緒に「眠そうに起きて」いました。
そんな女性の顔を見ていると、男性は抱き締めて温めてあげたくなったものです。
真夜中目が醒めると隣で
横向きでまるまっていた
寝言の声小さな音泣いているように
男性が抱いてあげて二人眠ったあとで、「真夜中目が醒めると」女性は「隣で」反対側へ「横向きでまるまって」いました。
何を思い出しているのか、夢に見ているのか、女性の「寝言の声」は「小さな音」を立て、それはまるで「泣いているように」暗く冷えた狭い部屋に響いていたのです。
そんな日々がしばらく続き、男性もどうしたものか分からなかったのだな。あるいは、その当時は何も気にせずに過ごしてしまっていたか……。
どこへ君は消えた訳も伝えず
道に迷って裏町の中を走り
雨の中を一人震える身体
ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの
ある日、女性は二人暮らす部屋へ入居した際に作った合鍵を置いて、出ていってしまいました。
男性は探しに行こうとしますが「どこへ」女性が「消えた」のか、置手紙さえなく「訳も伝えず」いなくなったためにあてがありません。
おそらく女性がこれまでずっとおこなってきたのと同じように、男性にできることは心の中で女性に想いを馳せることだけでした。
今頃「道に迷って」人通りのない「裏町の中を」さまよい「走り」、他にどこか行く場所があるわけでもないのにどうしているだろうか。
心も芯まで冷やすような「雨の中を一人」で行くうち、女性の「震える身体」は「ずぶぬれに」なっていることだろう。
そうまでして、女性は雨のせいとも涙のせいともつかない濡れた「瞳」を「光らせ」いったい「何を探すの」か……。
男性自身も予期していたことですが、このとき以来女性が帰ってくることはありませんでした。
怒った時は爪をたてる
ぼくを睨みつけるように
髪をなでる うれしそうに
笑い声あげた
女性との別れの一連を思い返していた男性は、また他の時間に想いを馳せます。
二人過ごしていると、女性は「怒った時」に引っ掻くことはしないまでも、何かを主張するようにするどく「爪をたてる」のです。
まるで男性を「睨みつけるように」するその仕草は、今思えば女性が気持ちを表現する手段だったことが分かります。
しかし男性はうやむやに言葉を交わして、女性の「髪をなでる」のですが、そうすれば“ネコ”は言おうとしていたことをすっかり忘れたかのように「うれしそうに笑い声あげた」ものでした。
気が強そうに見えてたけど
本当は臆病者さ
そこがぼくと同じだから
ひかれあい暮らした
そんな女性は「気が強そうに見えてたけど 本当は」一緒にいる相手がいなければ何をするにも踏ん切りがつかない「臆病者」でした。
「そこが」男性とまったく「同じだから」、似た者同士「ひかれあい」支え合いながら「暮らした」のです。
しかし最終局面で、女性は大きな決断をしました。きっと女性も自分の気持ちがどこへ向かっているのか、よく分からなかったのかもしれません。
どこへ君は消えた訳も伝えず
道に迷って裏町の中を走り
雨の中を一人震える身体
ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの
女性が家を出てからどのくらいの時間が経過したのかははっきりしません。
言葉には出さなかったけれど、男性と過ごす間にずっと何かを考えていたのかもしれないし、何かがふっつりと切れてしまったのかもしれない。
いくら考えても答えの見えない疑問とともに、男性は「どこへ君は消えた訳も伝えず」と語り掛けます。
今では自分も「道に迷って」しまい、女性のいないさびしい「裏町の中を走り」疲れている。
やまないとも思える「雨の中を」自分「一人震える身体」を運んで、こうして「ずぶぬれになり」ながら決して見つかることのない何かを求め「瞳光らせ」一体「何を探すの」だろうか……。
ここまで想いを馳せて、男性も少しだけ女性の気持ちが分かったような気がします。けれど、やはり女性に向けて伝えることができるのは、
ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの
聴きどころ
心が通じ合ったようでいて、お互いに自分の中で苦しい部分も抱えていたというような展開は「ピンボール」(アルバム『名もない星』所収)にもみられるところですね。
「ずぶぬれになり」の「れ」のところに村下さんらしい歌い方が出ているところも必聴です。
直接の関係はないお話ですが、あのPSY・S(サイズ)ボーカルCHAKAさんと「え」の発音が似ています笑
ピアノが有効に活用されて、いかにも「ネコ」と二人で暮らしている男性の情景が目に浮かびますね。
ここまでの解題ではネコ=お付き合いしていた女性として理解してきましたが、端的にペットとしての猫だととらえてもよいでしょう。
その場合、男性が想いを馳せる相手がもう一段階背景に引いた感じの存在になって、だからこそ男性の心のあり方がよく伝わるとも思えますね。
『清涼愛聴盤』セルフカバー
本楽曲には村下さん自身によるカバーバージョンががあります。
「白い花の咲く頃」や「陽炎」などとともに『清涼愛聴盤』というアルバムに収録されています。
ギターとハーモニカのイントロに変更されて、サビの部分の激しさは増して、さらにイメージを押し進めた仕上がりですね。
ちょっと冗談ぽく言うと、曲のテンポもゆっくりになっているのも相まって原曲から時間が経った感じがして、一体何十年想いを馳せてきたのか?!ともツッコミたくなります笑
管理人の感想(あとがき)
管理人が本楽曲に触れたのは、村下さんと出逢ってからしばらくしてだと思います。
比較的穏やかな曲ですし、世界観的にもメロディ的にも盛り上がる部分が目立つのではなく全体とよく調和している感じなので、そこまで着目していませんでした。
しかしやっぱり名曲ですね☆
具体的で日常的な表現で圧倒的に情景を描き出している点で、村下さんを聴き込むうちには一度は通る曲かなとも思います~。
まとめ
今回は村下孝蔵さんの「ネコ」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆
他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「かげふみ」でした)
ネコ【歌詞全文】
いつもぼくはおまえのこと “ネコ”と呼び捨てにしてた 細い目をし寒がっては 眠そうに起きてた 真夜中目が醒めると隣で 横向きでまるまっていた 寝言の声小さな音泣いているように どこへ君は消えた訳も伝えず 道に迷って裏町の中を走り 雨の中を一人震える身体 ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの 怒った時は爪をたてる ぼくを睨みつけるように 髪をなでる うれしそうに 笑い声あげた 気が強そうに見えてたけど 本当は臆病者さ そこがぼくと同じだから ひかれあい暮らした どこへ君は消えた訳も伝えず 道に迷って裏町の中を走り 雨の中を一人震える身体 ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの ずぶぬれになり瞳光らせ何を探すの
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1988年11月21日)
関連記事ーその他楽曲解説など
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
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