村下孝蔵さんの【幸せの時間】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞
村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!
当記事では、順番を前後して解説した遺作「引き算」、さらに前回取り上げた9thシングルA面「かざぐるま」に引き続き、同シングルB面「幸せの時間」を解説・鑑賞してまいります。
- 参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸
-
当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。
(⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら)
ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。
↓↓↓
村下孝蔵さんの【幸せの時間】歌詞の意味や世界観を徹底解説&鑑賞(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)
もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。
それでは、早速「幸せの時間」の解説に入っていきましょう!
下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。
- 🎵 当記事の著者について
-
差し込む赤い夕陽に
影絵のような君
灯りを消した部屋から
僕は外を見ている
解題
自分自身の心が空にたなびいているような、やわらかな印象を与えるイントロで始まる本楽曲。
基本的な場面設定としては、男性がおそらく結婚してともに過ごしている女性のことを見つめ、二人の現在の生活の有様について思いを巡らしているというものです。
とある休日の午後、二人で何をするでもなく同じ部屋で過ごした夕方、半開きのレースのカーテンを通して「差し込む赤い夕陽に」、座って動かない女性はまるで「影絵のよう」でした。
男性は女性に声をかけるでもなく、この「灯りを消した」薄暗い「部屋から」、何か今の生活に変化を与えるものを探すかのように「外を見ている」のです。
小さく響く風鈴
寝息のような風の音
おだやかな眠りをさましていく
季節は夏が過ぎようとしている頃でしょう。にもかかわらず吊り下げたままの「小さく響く風鈴」の音が男性の耳にふいに切なく障ります。
秋へ向かう冷たさを含む沈んだ「寝息のような」夕「風の音」が、二人がお互いの気持ちを抑えながら取り組んでいた結婚生活という「おだやかな眠りを」拭い去るように「さましてい」きます。
男性も女性も、この結婚生活に満足できるものではなく、うまく機能していないのは当然に自覚していました。
一方で、それをどうすることもできないのもよく承知しています。
いつか見つけられると信じてきた
幸せの時間を見た気がした
男性は、この夕刻に、ふと自分が結婚生活において「いつか見つけられると」心のどこかで「信じてきた」心穏やかな「幸せの時間を見た気が」しました。
皮肉にも、その時間は女性とともに何かをしている最中ではなく、こうして二人の生活が一時的に停止したときに訪れたのです。
その事実の重さを、男性はどのように受け止めたのでしょうか。
長い髪 束ねただけ
無造作なかたちは
暮らしの汚れた意味を
やさしくつつんでいる
影絵のように形ばかりが際立って不動の女性は「長い髪」を後ろに「束ねただけ」で、もはや全体のシルエットも「無造作なかたち」を示しています。
しかし、そのような姿こそが、二人の「暮らしの」数々の非充実性(仕事、家事、会話、同じ布団に入ること、その他すべて)が持つ「汚れた意味を」、それそのものとして「やさしくつつんでいる」ことも男性は理解しています。
男性の心は自分でもどこへ向かうのか分からず、また夕空へとさまよっていきます。
時が思い出をつくり
時がそれだけ重くなって
ささえきれなくなるまで 歩くのか
これまで何度空の色が循環し、季節が移り変わったでしょうか。
女性との生活は、確かにはじめは希望に満ちて……いただろうか? ともに過ごす長い「時が」それぞれの事柄に応じた「思い出をつくり」はしたけれど……。
そのようにして二人の「時はそれだけ」逃れようのないほど「重くなって」、最後に二人でも「ささえきれなくなるまで」この道を「歩くのか」……。
いつかたどりつけると信じていた
幸せの時間を見た気がした
男性は女性に視線を移して思います。
二人で「いつかたどりつけると信じていた」場所は、どこにあったのだろうか。もしかしたら、そんなところはこの生活のどこにもなかったのかもしれない。
そう思ってみると、男性は自分の心が自分の胸に収まったような感覚も覚えて「幸せの時間を」自分の内部に「見た気がした」のでした。
いつか見つけられると信じてきた
幸せの時間を見た気がした
女性との多くの時間を経て、男性は「いつか見つけられると信じてきた 幸せの時間」が、何かを求めてたどりつくものではなく、以前から失われることなく自分自身に存在しているのを「見た気がした」のでした。
彩りを失っていく結婚生活について、男女それぞれ(特に男性)の心の動きを丹念に追いかけた名曲といえるでしょう。
聴きどころ
上に見てきた歌詞の内容は救いようがない印象を与えるものともいえそうですが、それをまろやかにまさに「やさしくつつんで」しまうのが村下さんの歌唱です。
何度も何度も書いていますけど、村下さんはどれほど悲しかったり、切なかったり、やるせなかったりする場面の楽曲でも、それ自体を大切なものとして歌い上げることができる力を持っていますね。
メロディのやさしさと内容のギャップも聴きどころです。
管理人の感想(あとがき)
本楽曲の解題については、やや深読みをし過ぎた感もあります(笑)
もっと端的に、全体としてシングルA面「かざぐるま」の対照とみる方がよいのかもしれません。
その場合、二番の歌詞は男性が自分の生活を振り返っている場面であって、その生活と離れた道ならぬお相手の女性とのひとときこそが、男性にとって幸せの時間だったということになるでしょうか。
ただし、こちらの解釈でも、楽曲が全然幸せそうに聞こえないのが大きなポイントになっていると思います。
それでは、皆様もご自身なりの味わい方で村下孝蔵さんの「幸せの時間」を楽しんでくださいね☆
幸せの時間【歌詞全文】
差し込む赤い夕陽に 影絵のような君 灯りを消した部屋から 僕は外を見ている 小さく響く風鈴 寝息のような風の音 おだやかな眠りをさましていく いつか見つけられると信じてきた 幸せの時間を見た気がした 長い髪 束ねただけ 無造作なかたちは 暮らしの汚れた意味を やさしくつつんでいる 時が思い出をつくり 時がそれだけ重くなって ささえきれなくなるまで 歩くのか いつかたどりつけると信じていた 幸せの時間を見た気がした いつか見つけられると信じてきた 幸せの時間を見た気がした
(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1986年4月21日)
関連記事ーその他村下さん楽曲解説・シティポップ等
ここまでお読みくださってありがとうございました!
村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。
当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね
- 「隠れた名曲」ランキング
代表曲ほどには知られていませんが傑作と呼ぶにふさわしい「だめですか」、「ロマンスカー」、「珊瑚礁」、「りんごでもいっしょに」など、村下さんと出会った方なら必聴の名曲を多数解説しています! - 自分の心をどこまでも見つめる美しさと切なさと尊さ「初恋」
- 純粋だからこそ難解!「踊り子」を完全解説
- 「めぞん一刻」主題歌「陽だまり」に見るかけがえのない愛
- 真実の愛に無垢な「少女」の世界観に酔う